the man who never knew …

いきいきと生きると 粋に生きる

森道市場2019 リポート -フェスのその先へ- (後編)

太陽は山の影からほんの少しだけ見えるようになり、海風は半袖のTシャツからのぞく日焼けした体に冷たく吹き付ける。 

Charaを観終わった後、僕は再び友だちと合流した。 
合流地点はPurveyor's STAGE。

ぱあべやあず?

どうやら『仕入れ業者』の意味らしい。
目的はKEISHI TANAKA。
ぼくが知る限り、今、日本で最もエモーショナルで真っ直ぐな音楽を届ける男だ。

今日、ぼくは友だちにこの『仕入れ業者よりもカフェのオーナーが似合いそうな男』のステージを熱心に勧め、友だちもそれに応えてくれた。


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カーディガンでも羽織ってなきゃ心許ないひんやりとした空気の中、演奏が始まる。
ステージらしいステージもない広場で向き合うKCと芝生の上に座るオーディエンス。
アコースティックスタイルだ。

ぼくたちは、一番後ろで椅子に腰を掛けながら体を揺らす。
友だちの子どもも楽しげに手を叩いている。


今夜も終わりを待たせ 喜びの声をあげて 与えあう奇跡を 目の前の with friends 重ねる everyday

『breath』Keishi Tanaka


ほんのわずかだけオレンジ色が残った空に彼のどこまでも真っ直ぐな声が広がっていく。

幸せな時間とは何かと言えば、きっとこういう時間なんだろう。
ただ緩いわけでもなく、もちろん張り詰めているわけでもない。
目の前にあることに、ただ真っ直ぐな気持ちで向き合う時間。

他のステージでもたくさん幸せな時間を感じることができたけど、
もっともそのことを意識させてくれたのが、アコギ1本で、時にはアカペラで歌い上げたKeishi Tanakaのステージだった。


ほんとはずっと余韻に浸っていたかった。
けれど、そうはさせてくれない男たちがこの次に待っている。

BRAHMAN

なぜ鬼がこのようなチルでスロウなイベントに参加したのか。
その真相を探るべく、ぼくたちはメインステージへと向かった。

辿り着いた頃には、ステージは既に9割ほど埋まっていた。
というよりも、この時間までチルでスロウなこの空気に頬を赤らめたままだったパンクスたちが、今か今かと前のめり気味に集まって来てたのかもしれない。


この日何杯目かわからないアルコールをハードコアを聴かなくなって久しい体に注入してスタンバイする。

「空気なんか読まずにやるぞ!!!!」

始まったステージは圧巻の一言だった。
空間を支配するTOSHI-LOW
これまで頬を赤らめていたパンクスたちも、ここが俺らの戦場だと言わんばかりに暴れまくる。
これにTOSHI-LOWも応戦。モッシュピットにダイブ!!
したのは良いものの、戦意が高揚したパンクスに引きずりこまれ、割とマジでキレる。
というか、一部のやつらやりすぎ。
他のオーディエンスからもブーイングが出る始末。

そんな、終始目を離すことを許さない空気の中、TOSHI-LOWが語り出す。

鬼だ!やっぱり鬼がいる!

というのはもちろん鬼ジョークで、実際はむちゃくちゃ森道市場が気に入ったご様子。
ロハスだのやっぱ俺たち似合わねえだのなんだかんだ言いつつ、
日本の3指に入るフェスだ、でも次はOAUで来ると明言。

いや、大丈夫。こっちは愛があれば何だって受け入れるから。だって愛知だもん 。

と心の中でこっそり思った。


その後も土や潮の匂いがするような、生を意識せざるを得ないような楽曲を連発し、
「次はお前だ!」というTOSHI-LOWの叫びと共に突然ステージは終わりを告げた。


時計は20時前。
午前11時頃に入場して、あっという間の約9時間だった。

ここで友だち家族とはお別れをし、男ひとりで宛もなく会場内をうろつく。
ありがとう。とても楽しかったよ。君がいなかったらぼくはきっとここに来てなかった。


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いなほ屋のカレー。
ココナッツライス初体験だったけど、むちゃくちゃうまかった。
もう一回言うよ、むちゃくちゃうまい。


仕上げはTOFUBEATS聴きながらのウォッカ

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最初にハートランドを買ったお店。
お互いよくわからんテンションになった店長がぼくに恥ずかしいほどよく光るグラスを勧めてきたから、ぼくはこれで祭りの終わりを迎えることにした。


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そこに森があった。
誰かが道を拓いた。
人が集まり、市場ができた。

多分、ここはそんな場所。
いいことをしたいから人が来て、いいことがあると信じてまた人が来る。


ここに来てとにかくいいなーと思ったのが、ハッピーにしてもらうのではなく、ハッピーになろうとしてる人にたくさん出会えたことだ。それも、シンプルに。

いい音が鳴ってる。踊ろう。
おいしいご飯がある。うまいって言おう。
素敵な人がいて、素敵な物がある。いろいろ話してお互い気持ちよく買い物しよう。

そんな感じ。

もちろんいいことばかりじゃなくて、ツイートを追いかけてるとゴミの問題、トイレの問題、騒音の問題、不法駐車の問題と、何とかしなきゃいけない問題も山ほどあったようだ。

でも、今できてないことを嘆くよりも、できてること喜ぶほうがいいと思う。
ゴミなら来年はみんなでゴミ袋持って行けばいい。ぼくは持ってくよ?
困っている人がいるんだったら、困らないようにすればいい。ぼくは手伝うよ?


「一年に一回、「森道」でしか会えない人たちもたくさんいるから、そのために開いているくらいの気持ちもあります。そこで『あー車変えたんや』とかちょっと話すだけでも、なんかつながりって続くし、その環境って、めちゃくちゃいいと思うんですよね」

「気づいたらみんな巻き込まれている」動員3万人のフェス『森、道、市場』を創る狂気のカリスマ - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」


そんな森道市場。

来年もまた会いましょう。
そのときまで、どうぞお互いにハッピーで。